
(「オードリーDVD」のおまけの団扇)
すごくベタだけど、オードリーが好きだ。
2008年のM−1グランプリの予想をした時、ナイツとザ・パンチが決勝に進むことを望むのと同時に、敗者復活でオードリーが上がってきて欲しいと<しゃべるんや>にも書いたと思う。
熱狂的ファンという訳ではないのかもしれないけど、YOU−YUBEで彼らの映像を毎日観ているからファンには違いない。
<ズレ漫才>と呼ばれる形式や春日の独特なキャラクターが取り上げられることが多いが、実は漫才における演技の上手さは際立っている。
若林が喋っている時に春日が咳をして話が中断してしまうネタがあるが、その時に春日の咳の自然さ。
ツッコミを敢えて不自然な形でやっているだけに、その咳があまりにも自然で本当に咳をしてしまったようにも見える。
若林の話に対して春日が突然ツボに入ったように笑い出し、若林が調子に乗って話し続けていると春日が急に真顔になって無視するネタもそうだ。
「これ、ハマんなかったみたいですけどね」と若林が反省するのだが、この時の春日の笑い方もすごく自然で、一見本当に面白がっているように見える。
オードリーのネタは全部若林が書いているから、彼がオードリーの屋台骨のように思われているが、春日の演技力が虚と実のシーソーゲームを絶妙に成立させているとも言える。
つまり、そういう意味で彼らは正真正銘の実力派でもあるということ。
僕がオードリーを好きな理由のもうひとつは、春日がホンモノだということ。
これだけ売れた今でも、ファンや近所の人にはバレバレの風呂無しアパートに住み続けるというのは並の精神力ではない。
家賃というのはドブにお金を捨てているようなもので、お金を貯めて家を買うのが夢だと彼は言うが、家を買う買わないは別にして僕も家賃に対しては同意見だ。
家からシャンプーをしながらコインシャワーまで歩くから、近所の小学生から<シャンプーおじさん>と呼ばれていたというエピソードや、食パンの耳をもらって食べているというエピソードや、学生時代には友人が出した賞金のために学校の銅像にスリーパーホールドを掛けて首を折ろうとしたというエピソードなど、貧乏だからというだけではなく倹約という生き方を徹底しているのもホンモノである。
現在テレビに映っている春日は確かに作られたキャラクターではあるが、このホンモノの土台があるからこそ簡単に揺るがないのだ。
オードリーがまだ売れていない頃、渡辺正行さんが主催するラママ新人コント大会(ちなみに2009年7月で第264回というのは凄い。売れた今もお笑いを志す若手に場所を与えようとする渡辺正行さんに最大の敬意を表する。フォークジャングルの第100回なんてまだまだ)で、オードリーを観た渡辺正行さんは「これはM-1の決勝に行ける漫才だよ」と言い、春日のキャラ作りの参考になるから映画「トイ・ストーリー」のバズ・ライトイヤーを観た方がいいとアドバイスを与えたという。
僕はそれを聞いて実際に「トイ・ストーリー」のバズ・ライトイヤーを観てみた。
確かに、他人が何を言おうと耳を貸さず、自信たっぷりにかつ嫌味なく、自分を貫き通すというキャラクターは春日に共通している点が多い。
それを素早く見抜いてアドバイスをした渡辺正行さんは凄いし、オードリーはラッキーだったと思う(そのラッキーも実力があるからこそ呼び込めた)。
オードリーを観ていて最も感動したのは、<しゃべるんや>にも書いたが、M−1グランプリで最終審査発表前にインタビューを受けた時の春日。
ナイツ、NON STYLE、オードリー・若林が控えめなコメントをする中、春日だけは「(自信)なきゃ立ってないッスよ、ここに」と真っ直ぐに言い放ち、会場からは「オーッ」とどよめきが沸き起こった。
僕はその時鳥肌が立ったのを覚えている。
いくらキャラクターとは言え、それをあの場面で貫き通すのは並大抵ではない。
それは、キャラクターと本人が究極の形で一体化した瞬間だったのかもしれない。
ここ数年、毎年新しい<旬なお笑い芸人>が生まれ、すごい露出量で一気に消費されては影が薄くなって脇へ去って行く。
数々の芸人がそういう道を辿って来た。
オードリーももしかしたら同じ道を辿ることになるのかもしれないが、その後も見つめ続けていく価値のある数少ない芸人だと僕は思っている。
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