人によって怖いものは様々だと思う。
人間が作り出した物(原爆やサリンや各種の拷問器具等)とか人間の内面的な狂気や残虐性や剥き出しの欲望などは別にして、自然界に存在するものにも怖いものは幾つもある。
僕は子供の頃から雷が怖かったし、今も非常に怖い。
閃光と轟音による威嚇、無防備な相手に対する圧倒的な力、逃げ場がない時に被害者になる偶然性、どれをとっても恐ろしい。
地震を怖いと言うけれど、地震はその揺れ自体を敏感に恐怖と感じる人以外にとっては、人為的な物体(家や壁や電信柱など)の倒壊に対する恐怖や、派生する火事やパニックに巻き込まれる恐怖等、人為的、或いは二次的な災害に対する恐怖の方が大きい。
それよりも、東日本大震災を経験してからは、津波の方が圧倒的に怖くなった。
そんな中、僕がタンポポの綿毛が怖いと言ったらふざけていると思われるだろうか。
でも、僕は実はこれも昔から怖かったし、今も時々ゾッとする。
都市伝説だろうか。
タンポポの綿毛が耳に入ると耳が聞こえなくなるというのは。
僕は今も密かにそれを信じていてる。
いや、本当のことを言えば、<耳が聞こえなくなる>のを素直に信じているのではなく、耳の中にタンポポの綿毛が入って、耳が聞こえにくくなったり、取れなくなってずっとガサゴソという音が聴こ続けたりすることに対する恐怖心を拭えないでいる。
だから、宙を舞っているタンポポの綿毛を見る度に、取り敢えず「近づいて来るな」といつも祈っているし、風に乗って近づいて来たら、逃げるか払いのけるか耳を塞ぐ。
それと同時に、タンポポの綿毛が怖いなどと言っていられる時代が続くことを切に願う。
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